社員の心に響く!中小企業経営者のための感謝と承認の実践ステップ
働きがい向上の取り組みを検討されている中小企業経営者の皆様へ。
社員のモチベーション維持やチーム連携強化に課題を感じつつも、「具体的に何から手をつければ良いのか」「現場から抵抗や無関心があり、どう進めて良いか分からない」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。
働きがいを高めるための施策は多岐にわたりますが、実は大きなコストや複雑なシステムを導入せずとも、すぐに始められる非常に効果的なアプローチがあります。それが、「感謝」と「承認」の実践です。
本記事では、中小企業だからこそ取り組みやすく、社員の心に直接響く「感謝と承認」を日々のコミュニケーションに取り入れるための具体的なステップと、その効果について詳しく解説します。
なぜ「感謝」と「承認」が働きがいにつながるのか?
社員の働きがいを高める上で、「感謝」と「承認」は極めて重要な要素です。なぜなら、人は誰しも「自分の貢献が認められたい」「自分はチームや会社にとって必要な存在だと感じたい」という根源的な欲求を持っているからです。
- 貢献実感の向上: 自分の仕事や努力が、誰かに感謝されたり、認められたりすることで、「自分は役に立っている」という貢献実感が生まれます。これは、単に給与を得るためだけでなく、仕事そのものに価値を見出すことにつながります。
- 信頼関係の構築: 感謝や承認は、送り手と受け手の間にポジティブな感情の交換を生み出します。これにより、お互いへの信頼や尊敬が深まり、チーム全体の心理的安全性が向上します。
- モチベーションと主体性の向上: 認められることは、さらなる努力への意欲を高めます。また、「見てくれている人がいる」と感じることで、指示されなくても自律的に問題解決に取り組んだり、改善提案をしたりする主体性が育まれます。
- 帰属意識の強化: 自分の存在や貢献が受け入れられていると感じることは、組織への強い帰属意識につながります。「このチームのために頑張りたい」「この会社の一員でいたい」という気持ちが、働きがいを内側から支えます。
特に中小企業では、経営者と社員、あるいは社員同士の距離が近いため、感謝や承認のメッセージが直接的に伝わりやすく、その効果はより一層高まります。
中小企業経営者のための「感謝と承認」実践ステップ
では、具体的にどのように感謝と承認を実践すれば良いのでしょうか。ここでは、今日からでも始められる具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:意識を変える ~「当たり前」の中に隠れた貢献を見つける~
まず、経営者自身の意識改革から始めます。日々の業務の中で、社員が行っていることの多くを「社員として当然の仕事」と捉えていないでしょうか。しかし、その「当たり前」の中にも、会社の目標達成やチームの円滑な運営に貢献している無数の努力や配慮が隠されています。
実践アドバイス: * 社員一人ひとりの業務内容や役割を改めて確認してみる。 * 会議や報告の場で、成果だけでなく、そこにたどり着くまでのプロセスや努力、チームへの貢献(例: 難しい顧客対応、他のメンバーへのサポートなど)に目を向ける。 * 「これは誰のおかげで実現したのだろう?」という視点を持つ習慣をつける。
ステップ2:言語化する ~感謝・承認のメッセージを具体的に伝える~
感謝や承認の気持ちは、心の中で思っているだけでは伝わりません。必ず言葉にして伝えましょう。その際、漠然とした表現ではなく、具体的に何に対する感謝・承認なのかを明確にすることが重要です。
NG例: 「いつも頑張ってくれてありがとう」 OK例: 「〇〇プロジェクトの△△の件、夜遅くまで資料を準備してくれてありがとう。あの資料があったおかげで、今日の会議がスムーズに進みました。」
実践アドバイス: * 「いつ(When)、誰が(Who)、何を(What)した結果、どうなった(Impact)」という要素を含めて伝えることを意識する。 * 成果だけでなく、そこに至るまでの「努力」「工夫」「挑戦」といったプロセスにも焦点を当てる。 * 成功だけでなく、たとえ結果が伴わなかったとしても、その「挑戦」や「学び」を承認する。 * 形式ばらず、その場で率直に伝えることを心がける(もちろん、周囲への配慮は必要です)。
ステップ3:伝える頻度とタイミングを増やす ~日常の中に感謝・承認を溶け込ませる~
感謝や承認は、半期に一度の面談や大がかりな表彰式だけで行うものではありません。むしろ、日々のちょっとした瞬間に伝えることの方が、社員は「常に見られている」「気にかけてもらえている」と感じやすく、効果的です。
実践アドバイス: * 朝礼や終礼、チームミーティングなど、普段のコミュニケーションの場を活用する。 * チャットや社内SNSツールがあれば、そこで気軽に称賛や感謝のメッセージを送る文化を作る。 * 廊下ですれ違った時や休憩時間など、 informal(非公式)な場でも積極的に声をかける。 * 「気がついたらすぐに伝える」を心がける。時間が経つと、何に対する感謝・承認なのかが曖昧になりがちです。
ステップ4:仕組み化を検討する ~自然発生的な感謝・承認を促進する~
経営者やリーダーからの一方的なメッセージだけでなく、社員同士がお互いに感謝や承認を伝え合う文化が育まれると、働きがいはより強固なものになります。中小企業でも導入しやすい簡易的な仕組みを検討しましょう。
実践アドバイス: * サンクスカード/ノート: 物理的なカードやノートを用意し、感謝のメッセージを書いて誰かに渡せるようにする。 * 社内SNS/チャットツールの活用: 専用のチャンネルを作成し、「〇〇さんありがとう」「今日の△△、素晴らしかったね!」のように気軽に投稿できるようにする。 * Good&New: 朝礼やミーティングの冒頭で、「最近あった良いこと」や「新しく知ったこと」を共有する時間を設ける。個人のポジティブな出来事だけでなく、他者への感謝や称賛を含めることを推奨する。 * ピアボーナス(簡易版): 称賛のメッセージを送る際に、少額のインセンティブ(ポイントやプチギフトなど)を贈る仕組みを導入する(予算に応じて検討)。
ステップ5:効果を観察する ~小さな変化を見逃さない~
感謝と承認の実践による効果は、劇的に数字に表れるというよりは、組織の雰囲気や社員の行動にじわじわと現れることが多いです。小さな変化を見逃さずに観察しましょう。
実践アドバイス: * 社員の表情や声のトーンが明るくなったか? * チーム内の会話が増え、風通しが良くなったか? * 社員からの改善提案や自発的な行動が増えたか? * ちょっとしたミスをカバーし合うなど、チームワークが向上したか? * 社員アンケートや面談で、「認められていると感じるか」「貢献できていると感じるか」といった項目について質問してみる(簡易的なものでOK)。
現場の抵抗や社員の無関心への対応
「感謝や承認なんて、今更気恥ずかしい」「そんなことで何が変わるんだ」と、現場から抵抗や無関心に直面することもあるかもしれません。
このような場合、重要なのは「強制しない」ことと「経営者自身が本気で取り組む姿勢を見せる」ことです。
- まずは経営者自身から: 経営者自らが率先して社員に感謝や承認を伝え始めましょう。その真摯な姿勢が、徐々に周囲に影響を与えます。
- 小さく、自然に: 最初から大げさな仕組みを導入するのではなく、まずは日々の声かけから始めましょう。変化は小さくても良い、継続することが重要です。
- 目的を共有する: なぜ感謝や承認が大切なのか、それが働きがい向上やより良いチーム作りにどうつながるのかを、機会を捉えて社員に伝え続けましょう。
- ポジティブな変化を共有・称賛する: 感謝や承認のやり取りが増えたことによる良い変化(例えば、〇〇さんの協力を得やすくなった、チーム内のギスギスした雰囲気が和らいだ等)を積極的に共有し、そのような行動を称賛することで、取り組みの価値を浸透させます。
まとめ:感謝と承認は「投資」である
感謝や承認は、特別なスキルや大きな予算が必要な施策ではありません。しかし、社員の心に火をつけ、主体性やチームワークを引き出す上で、非常に強力な「投資」です。
中小企業経営者である皆様が、今日から意識的に「感謝」と「承認」を言葉にして伝えることから始めてみてください。それは、社員の働きがいを高め、結果として会社の成長を加速させる、価値ある一歩となるはずです。
現場の抵抗や無関心に直面しても、諦めずに、まずは「自分ができること」から、小さくても継続して実践していきましょう。その積み重ねが、必ずや組織のポジティブな変化につながるはずです。