働きがい改革の第一歩!社員の「本音」を引き出す聴き方・活かし方【中小企業向け実践ガイド】
働きがい改革に取り組みたいとお考えの中小企業経営者の皆様、特に「何から始めたら良いか分からない」「社員の反応がいまひとつ」といった課題に直面していませんか?社員のモチベーション維持やチーム間の連携強化は重要だと理解しつつも、具体的な一歩を踏み出せずにいる方もいらっしゃるかもしれません。
働きがい改革を成功させるために、まず最初に取り組むべきことの一つが、「社員の声」をしっかりと聴くことです。現場で働く社員の生の声には、組織の現状、課題、そして改善のための貴重なヒントが詰まっています。
この記事では、これから働きがい向上に取り組む中小企業経営者の皆様に向けて、社員の「本音」を引き出す具体的な聴き方から、集めた声を組織改善に活かすステップまでを分かりやすく解説します。
なぜ今、社員の「声」を聴くことが重要なのか?
社員の声を聴くことは、単に意見を募るだけではありません。働きがい改革の土台となり、様々なメリットをもたらします。
- 現状の正確な把握: 社員だけが知っている現場の課題や非効率な部分、仕事への本音(良い点、不満点)を直接知ることができます。経営者やマネージャーの視点だけでは見えない実情を把握し、適切な改善策を検討するための出発点となります。
- エンゲージメントの向上: 「自分の意見を聴いてくれた」「会社は自分たちのことを考えてくれている」と感じることで、社員の会社への信頼感や貢献意欲(エンゲージメント)が高まります。これは、離職率の低下や生産性の向上にも繋がります。
- 施策の精度向上: 現場の声に基づいた施策は、社員のニーズや実情に即しているため、効果が出やすくなります。経営層だけで考えた理想論ではなく、現場が「自分たちのための変化だ」と感じられる施策は、受け入れられやすく、定着しやすい傾向があります。
特に中小企業においては、社員一人ひとりの影響力が大きく、声が組織全体に与えるインパクトも大きくなります。社員の声を真摯に受け止め、働きがい向上への取り組みに反映させることは、組織全体の活性化に不可欠なのです。
社員の「本音」を引き出す具体的な聴き方
社員の声を聴く方法にはいくつか種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合わせて組み合わせることが重要です。
方法1:社員アンケート
比較的手軽に多くの社員から意見を収集できる方法です。
- メリット: 匿名性にすることで本音が出やすい、定量的なデータも収集できる、効率的に広範囲の意見を集められる。
- デメリット: 深掘りが難しい、文字だけではニュアンスが伝わりにくい、設問設計が難しい。
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実施のポイント:
- 匿名性の確保: 記名式では正直な意見が出にくい場合があります。無記名にしたり、外部ツールを利用したりするなど、社員が安心して回答できる仕組みを作りましょう。
- 質問項目の工夫: 漠然とした質問ではなく、「現在の業務で改善してほしい点は?」「働く上で喜びを感じるのはどんな時?」「会社に期待することは?」など、具体的な行動や感情に焦点を当てた質問を盛り込むと、より具体的な声が集まります。選択式と自由記述式を組み合わせるのも効果的です。
- 目的の明確化: なぜアンケートを実施するのか、集めた声をどう活用するのかを事前に社員にしっかりと伝えることで、協力体制を得やすくなります。
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中小企業向けのツール: Google Forms、Microsoft Formsなど、無料で利用できるツールでも十分に実施可能です。人事労務システムにアンケート機能が付帯している場合もあります。より高度な分析やエンゲージメント測定に特化した外部サービスも存在しますが、まずは身近なツールから試してみるのも良いでしょう。
方法2:個別面談・ヒアリング
社員一人ひとりと直接対話する方法です。
- メリット: 深い話が聞ける、背景や感情を理解しやすい、個別の課題や期待を把握できる、社員との信頼関係を築ける。
- デメリット: 時間と手間がかかる、面談担当者のスキルに左右される、全員実施は難しい場合がある。
- 実施のポイント:
- 目的の共有: 面談の冒頭で「働きがい向上に向けて、あなたの声を聞かせてほしい」など、目的を明確に伝えましょう。評価面談とは異なることを明確にすることも重要です。
- 「聴く」姿勢: 経営者やマネージャーは「話す」のではなく、「聴く」ことに集中します。相手の話を遮らず、相槌やうなずきを交えながら、共感的な態度で臨みましょう。
- 安心できる雰囲気作り: リラックスして話せる場所を選び、プライバシーが守られる配慮をしましょう。否定的な態度や批判的な発言は厳禁です。
- 重要な質問例:
- 「現在の業務内容や進め方で、より良くできる点はありますか?」
- 「どのような時に『この仕事をしていて良かった』と感じますか?」
- 「今後、どのようなことに挑戦してみたいですか?(キャリアやスキルアップについて)」
- 「会社に何か期待することや、相談したいことはありますか?」
- 守秘義務: 面談で話された個人的な内容や、特定の個人が特定されうる内容については、本人の許可なく他言しないことを徹底し、事前にその旨を伝えて安心感を与えましょう。
方法3:グループワーク・ワークショップ
複数名の社員で特定のテーマについて話し合う方法です。
- メリット: 多角的な意見が出る、参加者同士の新たな気づきがある、チームビルディングにも繋がる、前向きな改善アイデアが出やすい。
- デメリット: 参加者を選定する必要がある、ファシリテーションのスキルが必要、意見が出にくい人もいる可能性がある。
- 実施のポイント:
- 明確なテーマ設定: 「より良いコミュニケーションのために」「私たちのチームで働きがいを高めるには」など、話し合うテーマを具体的に設定します。
- 安心・安全な場作り: 誰でも自由に意見を言える雰囲気を作ることが最も重要です。否定的な意見を言わない、役職に関係なくフラットに話す、といったルールを最初に確認しましょう。
- ファシリテーターの役割: 話し合いを円滑に進め、様々な意見を引き出し、話をまとめたり記録したりする役割(ファシリテーター)が重要になります。
その他
- 目安箱や意見箱: 匿名で気軽に意見を投函できる方法。
- チャットツールの活用: 特定のチャンネルを設けて、改善提案などを自由に投稿できるようにする。
聴きっぱなしは逆効果!集めた「声」を組織改善に活かすステップ
せっかく集めた社員の声を、何もせずに放置してしまうと、「どうせ言っても無駄だ」と社員の不信感を招き、かえってエンゲージメントを低下させてしまう可能性があります。集めた声は、必ず組織改善に繋げましょう。
ステップ1:集計と分析
集まった意見を、肯定的な意見、改善提案、具体的な要望などに分類します。特に、多くの社員が共通して挙げている課題や、具体的に改善点を示している意見に注目します。アンケート結果であれば、簡単なクロス集計などで部署や年代による違いを見るのも有効です。手作業でも、表計算ソフトを使っても、自社に合った方法で分析を進めましょう。
ステップ2:結果の共有とフィードバック
集計・分析した結果を、社員全体に共有します。「皆さんの声を聞かせていただき、このような意見が集まりました」と伝えることで、「聴いてくれた」という安心感と信頼感が生まれます。すべての意見にすぐに対応することは難しくても、「こういう意見がありましたが、現状では対応が難しいです。なぜなら〇〇だからです。」のように、対応できない理由を正直に伝えることも誠実な対応です。
ステップ3:改善策の検討と実行
集まった声の中から、特に優先度が高い、あるいは対応しやすい課題を選び、具体的な改善策を検討します。例えば、「社内コミュニケーションが不足している」という声が多ければ、週に一度のチームミーティング導入、情報共有ツールの活用、ランチミーティングの推奨などが考えられます。「業務フローが非効率」という声には、その業務に関わるメンバーで改善プロジェクトチームを立ち上げることも有効です。中小企業の場合は、大掛かりなシステム導入よりも、まずはルール変更や簡単なツール活用、コミュニケーション方法の見直しなど、スモールスタートで実行できる施策から着手するのが現実的です。
ステップ4:効果測定と継続
実施した改善策が、働きがい向上に繋がっているかを定期的に確認します。例えば、再度簡単なアンケートを実施して社員の意識の変化を見たり、離職率やエンゲージメント指標(もし設定していれば)を定点観測したりします。働きがい改革は一度やって終わりではなく、継続的な取り組みです。社員の声を定期的に聴き、改善策を実行し、その効果を確認するというサイクルを回していくことが重要です。
中小企業の事例に学ぶ:社員の声から生まれた変化(架空事例)
あるITサービス業の中小企業(従業員30名)では、社員アンケートを実施したところ、「部署間の情報共有がうまくいかず、二度手間が発生することがある」「自分の仕事が会社全体の貢献にどう繋がっているか分かりにくい」という声が多く挙がりました。
これを受け、同社では以下の施策を実施しました。
- 週次の全体共有会: 各部署の進捗や会社の最新情報を全員で共有する時間を設けました。
- プロジェクト管理ツールの導入: プロジェクトごとのタスクや進捗を可視化し、誰でも確認できるようにしました。
- 四半期ごとの目標共有会: 各人の目標とそれが会社目標にどう繋がるかを共有する機会を設けました。
これらの施策を実施した結果、部署間の連携がスムーズになり、自分の業務が会社に貢献している実感が持てるようになったという声が増え、社員アンゲージメントスコアも徐々に向上しました。
この事例から学べるのは、「聴くこと」と「具体的な行動を示すこと」のセットが重要であるということです。社員は、自分たちの声が無視されず、真剣に受け止められ、改善に繋がっていることを実感できた時に、会社への信頼を深め、より主体的に働くようになります。
まとめ:まずは「聴く」ことから始めよう
働きがい改革は難しく考える必要はありません。まずは「社員の声を聴く」というシンプルな一歩から始めることができます。
アンケート、面談、ワークショップなど、方法は様々ありますが、最も大切なのは、社員の「本音」を聴こうとする経営者・リーダーの姿勢と、集めた声を「必ず何かに活かす」という実行力です。
完璧な計画や大規模な施策でなくても構いません。社員の声を聴き、小さなことからでも改善を始め、その変化を社員に伝える。このサイクルを回していくことが、働きがい向上への確かな一歩となります。
この記事が、これから働きがい改革に取り組む中小企業の皆様にとって、具体的な行動を始めるきっかけとなれば幸いです。